私は、緩和ケア医として、おもに手術や抗がん剤治療ができなくなった終末期のがん患者さんをたくさん診てきました。終末期ということもあり、そのほとんどは、近い将来亡くなることになりますが、中には思いのほか長生きしたり、場合によってはがんが消えてしまった患者さんもいました。いわゆるがんの自然緩解(かんかい)という現象です。なぜそのようなことが起こるのははっきりわかりませんが、特に代替療法や健康食品に一生懸命になっているというわけでもなく、どちらかというと自然の流れに身を任せ、悠々と日常生活を送っている人が多かったという印象があります。私は身体に自然治癒力があるように、心にも自然治癒力があると思っており、それを「心の治癒力」と言っています。心と体はつながっているので、多分、心の治癒力が、何かしらの理由でうまく機能し、それが自然治癒力を活性化した結果として、がんの進行が止まったり、縮小へと向かわせたのではないかと思っています。
では何が心の治癒力を活性化させるのでしょうか。それは「つながり」や「きっかけ」ではないかと思っています。つまりそれらを通して、安らぎや喜び、さらには希望や可能性を感じられたとき、心の治癒力は活性化され、それがときにがんの自然緩解が起こるのではないかと考えています。
何がそのような「つながり」や「きっかけ」になるかは人それぞれ異なりますが、もしかしたらこの「がんサロン」がその役割を果たしてくれるのかもしれません。ぜひ、この機会を最大限に活かして頂けたらと思っています。
彦根市立病院緩和ケア内科 黒丸尊治