2022.7.24 on Zoom
2019年末に始まった新興コロナウィルスによるパンデミックは、単に感染症という医学的な問題ではなく、心理的、社会的、経済的、政治的、倫理的、実存的といったさまざまな要因が複雑に絡み合って生じた、地球規模の一種のパニック状態と言えます。
この2年間の世界的混乱は、生物医学モデルとしての近代西洋医学による「古典的感染症対策」が、いかに矛盾に満ちており、全体を俯瞰する「ホリスティックな視点」が欠如した、とんでもない対策であったかを明確に示しています。
今回の「やさしいホリスティック医学教室」では、この2年間を振り返りながら、これからの新しい時代に必要とされる、全体を俯瞰する「ホリスティック医学」の考え方や定義について、わかりやすく解説いたします。
今回は、Zoomによるオンライン参加で開催したものを、後日視聴用に販売しています。
こちらからダイジェスト版をご覧いただけます。
フルバージョンは「前編・後編」で3時間の動画です。
特典資料(下記の7つの資料が特典としてダウンロードできます。)
- やさしいホリスティック医学教室2022(配布資料)
- やさしいホリスティック医学教室2022(配布資料)2スライド/枚版
- コロナ禍の同調圧力とどう向き合うか(竹林)
- マスクの常時着用習慣を終わらせるために
- PCR検査の注意点
- コロナワクチン被害(大人)
- コロナワクチン被害(子供)
プロフィール:竹林直紀(たけばやし なおき)
・ナチュラル心療内科 院長 ・日本ホリスティック医学協会運営委員
愛知医科大学卒。関西医科大学、九州大学にて心身医学を研修。サンフランシスコ州立大学ホリスティック医療研究所にて、バイオフィードバック(BF)や統合医療を研究。
現在、BF・マインドフルネス・分子栄養療法などを取り入れた、薬を使わないホリスティックな統合医療クリニック「ナチュラル心療内科」院長。著書「心療内科医が教える 疲れた心の休ませ方」(青春出版社)など。
ホリスティック医学協会 「ホリステイックマガジン」より
コロナ禍の同調圧力とどう向き含うか、ホリスティックな視点で考える
竹林直紀 (ナチュラル心療内科院長/日本ホリスティック医学協会運営委員)
はじめに
2019年末に中国武漢から始まった新興コロナウイルスによるパンデミックは、2年を過ぎた2022年2月現在、ようやく終息・終焉に向かい始めたようです。
しかし、世界各国で実施された過剰な感染症対策が引きおこしたさまざまな健康被害や社会経済的ダメージが回復するまでには、まだまだ時間がかかると思われます。この回復のプロセスは、視点を変えると「古いパラダイムの崩壊」と「新しいパラダイムの始まり」でもあるといえます。
この2年間の世界中の混乱状態は、心身二元論に基づく物質中心の古いパラダイムによる「古典的感染症対策」が、いかに矛盾に満ちており、全体を俯敵する「ホリスティックな視点が欠如」した、とんでもない対策であったかを明確に示しています。
私自身も、一部の感染症専門家だけの意見が正しいとされ、他の領域の多くの専門家の意見を無視または否定するという非科学的で独善的・支配的な状況と、それを政府や自治体首長、ほぼ全てのマスメディアが支持するという、「戦前の全体主義」を彷彿とさせる出来事に危機感を感じていました。
昨年10月にオンラインで開催されたホリステイックシンポジウム関西2021『風の時代を生きる~ コロナから始まる新たな価値観に向かって』は、このような状況下で「ホリスティックな視座」こそが、今のパンデミック・パニックを終焉させるために必要であると強く感じ企画いたしました。
ご講演いただいた大阪市立大学医学部名誉教授の井上正康先生には、まさにホリスティックな視点から非常に分かりやすく明快なお話を伺うことができました。オミクロン株については、これまでのデルタ株のウイルスとは全く別のウイルスであり、重症化肺炎を起こすACE2レセプターにはもはや感染しない「風邪コロナウイルスに過ぎない」と報告されています。
欧米に比べて感染者数や重症者数が桁違いに少ない日本において、個人の心身の健康状態や社会経済に大きなダメージを与える過剰な同じ感染症対策が、何故何度も繰り返されてきたのでしょうか。
この疑間に対しては、今後私たち人間の心の間題として、心理学や社会心理学、文化人類学の立場からの検証が必要となります。もう1人の演者である英国在住の心理セラビスト、溝口あゆか先生によるポリヴェーガル理論のお話は、まさにこの心理的側面について重要な鍵となる内容でした。
哺乳動物である人間が持つ環境に適応し身を守るための本能の働きにより、「フリーズ状態」になったことが一要因であると指摘され、英国の状況を紹介しながら、単に周囲に合わせるのではなく「自分はどのように生きたいのか」を真剣に考え、新しい意識へ飛躍するチャンスでもあると強調されました。溝口先生のお話は、私たちが考えていくべきことであり、その先に「同調圧力」への対処法も見えてくるのではないでしょうか。
本稿では、「群衆心理」「マインド・コントロール」「ポリヴェーガル理論」というキーワードを提示し、日本独自の「世間」という世界が生み出す「同調圧力」に対して、どのように向き合えばいいのか、ホリスティックな視点から述べてみたいと思います。
同調圧力を生み出す構造
同調圧力とは、「異論を許さない空気」「異論を唱える人や少数意見の人に対して、周囲の大多数の人達と同じように考え行動するよう、暗黙のうちに強制すること」とされています。集団を優先する日本人においてはその影響は大きく、多くの人が同調圧力に対して息苦しさやストレスを感じてはいるものの、周囲の大多数の意見や行動に従ってしまいます。
評論家で世間学、現代評論、刑事法学を専門とする佐藤直樹氏によると、日本人社会は法律で定められた人間関係としての「社会」と、日本人が集団となった時に発生する「世間」という力学の二重構造になっており、同調圧力はこの「世間」において生まれてくるとされています。
「世間体」「世間に迷惑をかけない」「世間の目」など、日本人にとっての「世間」という意味は、「個人の自由」と引き換えに「集団での安全・安心」を保証される一種のシェルター(避難場所)のような役割を担っています。そこでのルールは、論理的、合理的な考え方や行動ではなく、「周囲の皆と同じ考え。行動をすること」であり、「しきたりだから」「昔から皆そうしているから」「それが伝統だから」といった表現で示されるような「神秘性」「呪術性」に支配される世界になります。
幼少期から、集団を優先させ周囲の空気を読むように教育されてきた日本人にとっての「安全・安心」とは、「同調圧力」と表裏一体の同じものであるのかもしれません。「個人」と「社会」の欧米で、毎週のように行われている過剰な感染症対策への大規模な反対デモが、日本ではほとんど起こっていないのも、「世間」に逆らうことにより「安全・安心」を失ってしまうことへの「不安・恐怖」の方が大きいからではないでしょうか。
群衆心理
欧米においては、同調圧力に関係のある書籍として、フランス人のル・ボンによる『群衆心理』が有名です。ル・ボンは、群衆に思想や信念などをしみこませる心理操作の方法として、「断言」「反復」「感染」の3つが重要としています。
難しい理論や論拠などを伴わない、できるだけ誰もが理解できる簡潔な表現で「断言」することと、それを同じ言葉で徹底的に繰り返して「反復」することで、たとえ真実でないことでも、群衆の頭の中にあたかも真理かのように定着させるのです。
その結果、群衆全体の意見が一致するようになり、さらに他の群衆へもその同じ思想が「感染」し広がっていくのです。この本はヒトラーの愛読書であったことでも有名ですが、今の現代社会でも同じことが起こっており、同調圧力もその結果としての現象であると言えます。
マインド・コントロール
マインド・コントロールとは、社会心理学の視点から説明可能な、巧妙な他者操作の技術とされています。特定の思想や政策を一般大衆に広めるためのマスメディアを使ったプロパガンダや、テレビのコマーシャルやネットショッピングなどでの購買意欲を促す広告宣伝なども、一種のマインド・コントロール状態と言われています。
マインド・コントロールは、長時間個人を拘禁状態において拷問したり、薬物を投与したりすることで個人の思考力を破壊し、新しい価値観や思想を強制的に植え込む「洗脳」とは異なり、本人が気づかないうちに心を操作されていることが特徴です。
カルト集団からの脱会カウンセリングを行っているハッサンは、多くの臨床経験からマインド・コントロールの心理学的状態について、表2の4つの構成要素にまとめています。この4つの要素は、コロナ禍でも実際に起こっている現象であり、そのことに気づくことが「同調圧力」への対処法を各自が見つけるための最初の第一歩となります。
ポリヴェーガル理論
精神生理学者のステフアン・ポージェス博士により提唱された「ポリヴェーガル理論」は、自律神経をその働きから「交感神経」「腹側迷走神経」「背側迷走神経」の3つに分類します。この理論では、従来の副交感神経(主に迷走神経)を、その働きにより次の2つに分けました。
1つは休息とエネルギー再生に必要な「安全・安心な環境」を確保する集団での社会的交流に必要な、表情筋や五感などが関与する腹側迷走神経(社会交流)で、もう1つは命に関わる危機的状況下でフリーズすることで身を守る背側迷走神経(不動化)です。
また、安全・安心・危険・生命の危機を判断するニューロセプションという働きにより、人は安全・安心を身体と本能の両者で察知することができると言われています。
進化の過程で最も古い身を守るシステムが、背側迷走神経による不動化という戦略で、今でも昆虫や爬虫類は擬死状態で身を守ります。次に進化したのが交感神経による可動化戦略で、闘うか逃げるかといったストレス反応において主役となります。最も新しく登場したのが腹側迷走神経による社会交流という戦略です。
これは集団生活をする哺乳類にとって、安全・安心を確保する社会との関わりで重要であり、コロナ禍では過剰な自粛や隔離により、この社会交流の自律神経の働きが妨げられてしまいました。その結果、安全・安心を確認する手段が「視覚」と「聴覚」が中心となってしまい、マスメディアからの情報が「不安・恐怖という感情」を引きおこし続ける結果となっています。
「世間」における同一性を確認することが「安心・安全」を手に入れることになる日本においては、たとえ「同調圧力」による息苦しさを感じながらも、今は身を守るための「世間への通行手形」として、マスクが手放せないのかもしれません。
おわりに
「進化の罠」という言葉があります。人類は太古の昔から自然の中で環境に適応すべく進化してきました。原始時代においては、文字通り「闘うか逃げるか」に必要な交感神経系が、そして大きな集団を作るようになってからは「社会」という集団の中で安全・安心を確保しながら生活するべく社会交流神経(腹側迷走神経)が進化してきたのです。
近代社会においても、哺乳動物としての人類の身体は、大昔から少しずつアップデートしながら遺伝情報として受け継がれています。
コロナ禍による自粛・隔離などの感染症対策によって、一方ではIT端末による自宅でのテレワークやオンライン授業など「身体を動かさない」という生活スタイルを余儀なくされました。また五感をフルに使って、今この瞬間の現実世界に適応するべく進化してきた能力も、インターネットを使った視覚と聴覚だけの環境に適応せぎるを得なくなってしまいました。
本来、五感を使ったニューロセプションにより安全・安心を確認してきた人類にとって、「目に見えないウイルスという敵」が出現したと思い込んでしまった結果、闘ったり逃げたりしなければならないと本能レベルで感じ、マスクや自粛・隔離でウイルスから逃れようとし、リスクがあったとしても遺伝子ワクチンでウイルスと闘おうとしたのです。
また、何とか敵を見つけようと検査を繰り返したことで、見えなければ何も感じなくて済んだはずの「不安や恐怖」を、さらに強く感じることになるという悪循環に陥ってしまいました。
その結果、必要以上に「命の危険」を感じるようになった動物としての人間は、最終手段であるフリーズという「不動化状態」になり、冷静に状況を判断できず、思考停止状態になってしまったのです。唯一頼ることができる「世間」というシェルターと、ただひたすら同一化して身を守ることしかできなくなった結果、マスメディアからの情報だけを「世間」とつながるために信じ続けているのかもしれません。
「同調圧力」に向き合い対処していくためには、今起こっている出来事を、できるだけ俯瞰した広い視座から「ホリスティック」に見ることが重要です。そのためには、自分が認識し体験している「各自の世界」に大きな影響を与えている、「五感からの情報」を慎重に吟味する必要があります。
特に「不安・恐怖の感覚」が起こる情報は、健康や生命にも影響を及ぼす可能性が高いため、その情報源の真偽について自ら確認することが、これからの時代は必要となるでしょう。日常の中で気づかないうちにマインド・コントロール状態になっていないか、今一度自分自身の生活を振り返り確かめてみましょう。
自由主義国家の日本において、テレビや新聞などの全てのマスメデイアがほぼ同じ論調や意見を報道している場合は、プロパガンダのような何らかの意図が働いている可能性が高いと考えるべきでしょう。
自ら直接情報を確認していくことが、「同調圧力」を生み出さない社会を、今後創り出すことにつながっていくのではないでしょうか。
参考図書
1.鴻上尚史、佐藤直樹「同調圧力 日本社会はなぜ息苦しいのか」講談社現代新書(2020)
2.佐藤直樹「「世間」の現象学」青弓社(2001)
3.ギュスターヴ・ル・ボン「群衆心理」講談社学術文庫(1993)
4.武田砂鉄「100分de名著 群衆心理」NHK出版(2021)
5.西田公昭「マインド・コントロールとは何か」紀伊國屋書店(1995)
6.ハッサン「マインド・コントロールの恐怖」恒友出版(1993)
7.津田真人「「ポリヴェーガル理論」を読む:からだ・こころ・社会」星和書店(2019)
8.エリック・ペパー「テック・ストレスから身を守る方法」青春出版社(2022)
9.竹林直紀「心療内科医が教える疲れた心の休ませ方」青春出版社(2021)
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