がんは生き方を問う  ごあいさつ

もしあなたが、あるいはあなたの愛する人ががんになったとしたら・・・

もし手術で治療したはずのがんが再発しているとわかったら・・・

もしもう治療の方法はない、残された命はあとわずかだと告げられたら・・・

あなたはどう生きますか?

私は、1980年に大学を卒業後、耳鼻咽喉科の医師として40年以上過ごしてきました。その間、多くのがん患者さんと出会い、手術をし、放射線治療や化学療法を行い、そして多くの方の最後を看取ってきました。「耳鼻咽喉科にがんなんかあるのか?」と思われるかたもおられるかもしれませんが、頭頸部がんといわれるものがそうで、喉頭、咽頭、舌、上顎、甲状腺などにできるがんが代表的なものです。私が勤務していた地域の基幹病院や、大学の耳鼻咽喉科の病棟の入院患者さんの半数以上はがん患者さんです。最近は単に耳鼻咽喉科だけではなく、頸から上の部分の外科と言う意味で「耳鼻咽喉科・頭頸部外科」という表現をする病院も増えてきています。

この頭頸部がんは、言葉をしゃべったり、食べ物を噛んだり飲み込んだりという、日常生活でとても大事な働きにかかわる場所にできます。ですから手術をはじめとするいろいろな治療を行うにしても、病気の根治性と生活のための機能の維持の両面を考えて治療方針を立てなければならず、判断が難しいことがよくあります。再発して末期になった場合などは、しゃべる事や口からものを食べる事ができなくなり、また目に見える場所にできることも多いため、本人はもちろん、お世話する人も非常につらい状態になることがしばしばです。そんな悲惨な状態の中でもなお生き続けている患者さんたちをみるとき、生きていること、生かされていることの意味を考えさせられます。

その頭頸部がんの一つである「咽頭がん」を私自身が44歳の時に発症しました。まさに自分が治療を行ってきた、自分の専門領域のがんに自らがなってしまったわけです。恥をさらすようですが、見つかったときにはかなり進行した状態でした。幸い私のわがままを許してくれた多くの有能な医師たちと家族の協力により、今もこうして生きています。後から色々考えると、この貴重な体験から学んだことは非常に多かったように思います。また、30年近く前から私がかかわってきたNPO法人日本ホリスティック医学協会が主催する多くの先生方の講演や、いろんな書物を通して学んできた、さまざまな医療観や人生観、代替医療の知識もとても役に立ちました。

そこで、私が自分自身の体験と、多くの書物から学んだことを、少しでも皆さんのお役に立てるようにと書かせていただくのがこのページです。少しずつ緩やかにアップしてゆきたいと思います。ただ、ここに書いてゆく内容については、あくまで私の個人的な意見です。様々なお考えの方がおられると思いますが許容頂きたくお願い申し上げます。

愛場庸雅